結局、誰が一番悪かったのか。
『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』を観終わったあと、頭から離れなかったのがこの疑問でした。
セイレーンは島民を襲いました。ヒトハとフタバは人魚を犠牲にしました。そしてちいかわは、真相に気付きながら誰にも告げませんでした。
セイレーン編の感想でよく見かけるのは、「誰も悪くないから悲しい」という受け止め方です。
もちろん正解はありません。誰か1人を悪者にすれば終わる話でもない。かといって、ブログとして全員悪くないで片付けるのも、なんだか面白くないですよね。
だからこの記事では、私が感じたことを書いています!
私は7月24日、公開初日に観てきました。4者の責任を段階ごとに分けて、順番に見ていきます。みなさんも、観たときに感じたことを思い出しながら読んでみてください。
⚠️ ネタバレ注意
この記事には『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』および原作「セイレーン編(島編)」の結末までのネタバレを含みます。
まだ観ていない方は、鑑賞後に戻ってきてください。
あらためて、この記事の立場を書いておきます。
この物語に完全な被害者はいません。発端をつくったセイレーン、罪を犯して隠したヒトハとフタバ、そして真実を知りながら黙ったちいかわ。それぞれが別の段階で、悲劇を止めない選択をしています。
ただし、責任の内容も重さも同じではありません。
島で起きたこと|悲劇は4段階で広がった
感情の話に入る前に、まずは何が起きたのかサクッと並べておきます。
- セイレーンと人魚が遊んでいるところへ、ヒトハとフタバの船が来て衝突する
- フタバが瀕死の状態になる
- ヒトハがしるこサンドで人魚をおびき寄せ、殴り殺す
- ヒトハが人魚の肉をフタバに食べさせる
- 復活したフタバが、ヒトハにも肉を食べさせる
- 2人が永遠の命になった事実を隠す
- 人魚を失ったセイレーンが、島民を襲い始める
- ちいかわが2人の秘密に気付く
- ちいかわは真相を告げないまま島を去る
- ヒトハとフタバも、別の島へ逃げる
こうして並べてみると、行為の中身がバラバラだと分かります。
| 段階 | 問題になる行為 |
|---|---|
| 発端 | セイレーンによる衝突でフタバが瀕死 |
| 決定的な一線 | ヒトハによる人魚の殺害 |
| 被害の拡大 | セイレーンによる島民への報復 |
| 真相を告げない | 2人の隠蔽と、ちいかわの沈黙 |
この4段階、順番に見ていきましょう!
セイレーン|報復の相手を、選び間違えた
まず押さえておきたいのが、フタバを瀕死にした直接の原因はセイレーンだということ。
悪意はなかったのでしょう。人魚と遊んでいるところへ船が来て、ぶつかってしまった。それだけの事故でした。
ただ、悪意がなかったことと、責任がないことは別だと思うんです。
セイレーンの体はちいかわ達よりはるかに大きくて、ラッコさんを手こずらせるほどの力の持ち主です。
遊びに夢中で、周りがまったく見えていなかったんですよね。
そして、事故よりも重いのがその後です。
仲間の人魚を失ったセイレーンは、犯人を特定しないまま島民を襲い始めました。壺に漬け、味を染み込ませ、次々と犠牲にしていきます。
人魚を食べたのは島民全体ではありません。それでも、怒りは島全体へ向けられました。
セイレーンの悲しみは分かります!それでも、無関係な島民を食べる行為までは正当化できません。
事故は防げなかったかもしれない。でも、誰を襲うかは選べたはずの部分です。
ヒトハ|友達を救うために、無関係な人魚を選んだ
この物語で、最も重い一線を越えたのがヒトハです。
目の前で友達が死にかけている。助けたい。その気持ちには、正直同情できます。
それでも、選んだ手段が重すぎました!
原作では擬音で流れていた場面が、映画では鈍い音として耳に届きます。ページで読むのと、音で聞くのとでは、この行為の重さがまるで違いました。
殺された人魚は、事故とは何の関係もない存在です。船にぶつかったのはセイレーンであって、人魚ではありません。
しかも、偶然そうなったわけではありません。
ヒトハが使ったのは、しるこサンドでした。餌でおびき寄せて、殴る。この手順を踏んだ時点で、衝動ではなく準備された行為です。
人魚を治療の手段として扱い、そのために計画を立てた。ここが一番きついところでした。
大切な友達を救うためなら、無関係な誰かを犠牲にしても許されるのか。
ヒトハが背負っているものを整理すると、
- 人魚を計画的に殺した責任
- 真相を隠し続けた責任
- 島民が襲われ続ける状況を放置した責任
フタバ|被害者でいられたのは、目を覚ますまで
フタバの立場は、物語の途中で変わります。
船の事故で瀕死になった時点では、フタバは明確な被害者です。人魚を殺す判断をしたのはヒトハであり、意識のなかったフタバに責任はありません。
変わったのは、目を覚ましたあとです。
自分だけが不老不死になってしまった。その恐怖から、フタバはヒトハにも人魚の肉を食べさせました。罪を分け合い、2人で秘密を抱える関係がここで生まれます。
そして島民が犠牲になっていく間も、2人は名乗り出ませんでした。
本当に重いのは、隠し続けた時間
ここまで書いてきて、私自身の見方も少し変わりました。
この事件で決定的だったのは、最初の過ちそのものより、そのあとの時間の使い方だったのではないかと思うんです。
ヒトハが人魚を殺したのは、友達が死にかけている場面でのことでした。切迫した状況での判断です。
けれど、フタバが復活したあとには時間があったんです。セイレーンが島民を襲い始めてからも、名乗り出る機会は何度もありました。
それでも2人は黙り続けました。自分たちの秘密を守るために、島民が犠牲になる状況を選び続けたことになります。
ちいかわの沈黙は、優しさだけではない
そしてもう1人、この事件の外側にいられなくなった存在がいます。ちいかわです。
ちいかわは人魚を殺していませんし、島民を襲ってもいません。
それでも、フタバのお尻にある単三電池を見た瞬間、ちいかわは真相に気付いてしまいました。手をつないで震える2人の姿も見ています。
そのうえで、セイレーンにも島民にも告げないまま、島を去りました。
この沈黙は、単に怖くて何も言えなかったからではないと思います。
もちろん、真実を告げることへの恐怖はあったはずです。しかし同時に、ヒトハがフタバを助けるために人魚を手にかけたことや、2人が罪を抱えながら怯えていることまで理解したうえで、簡単に誰かを差し出すことを選ばなかったのではないでしょうか。
以前のちいかわであれば、恐ろしい出来事を前に泣き、誰かに助けを求めるだけだったかもしれません。
けれど、このときのちいかわは、自分が知ってしまった真実の重さから目をそらさず、それでも2人を一方的な悪者として裁くことはしませんでした。
何が正しいのか、すぐに答えを出せる状況ではありません。それでも、誰かに判断を委ねるのではなく、自分で考え、自分の意思で沈黙を選んだ。
あの選択が本当に正しかったかどうかは分かりません。
しかし、事情を知った相手に寄り添い、簡単に断罪しないという選択には、ちいかわの優しさだけでなく、これまでの経験を通して育まれた強さと成長が表れていたように思います。
沈黙を擁護する見方と、批判する見方
ここは読者によって割れるところだと思うので、両方並べてみます!
| 沈黙を擁護する見方 | 沈黙を批判する見方 |
|---|---|
| 2人にも事情があった | 無関係な島民が犠牲になっている |
| 告発すれば2人が殺される | 隠せばセイレーンの攻撃が続く |
| ちいかわに裁く権限はない | 真実を伝えることはできた |
| 恐怖の中で即断はできない | 結果的に2人の逃亡を助けた |
ちいかわの責任は、ヒトハやセイレーンと同じ重さではありません。
そもそも、ちいかわに責任を求めること自体が酷だという見方もあると思います。討伐クエストで呼ばれただけの立場で、島の事情を背負う理由はどこにもありません。
それでも、あの沈黙は結果に影響しました。責めるかどうかは別として、そこだけは切り離せません。
エンドロール後
映画では、エンドロールのあとに2人のその後が描かれます。
別の島にたどり着き、生活を始めた2人。そこへセイレーンが向かっていく描写で、映像は終わります。
永遠の命になっても、過去からは逃げられません。2人の穏やかな暮らしは、殺された人魚と犠牲になった島民の上に成り立っています。真実が明らかにならない限り、セイレーンの追跡は終わらないのだと思います。
結局、誰が一番悪かったのか
ここまでの整理を、表にしました。
| 誰 | 主な責任 | 重さ |
|---|---|---|
| ヒトハ | 人魚の計画的な殺害、隠蔽、被害の放置 | 最も重い |
| セイレーン | 衝突事故、犯人を特定しない島民への報復 | 重い |
| フタバ | ヒトハを巻き込み、秘密を共有して隠し続けた | 重い |
| ちいかわ | 真相を知りながら告げなかった | 限定的 |
最も重い責任を負うのは、無関係な人魚を意図的に殺し、その事実を隠し続けたヒトハだと私は考えます。
ただし、発端の事故を起こし、犯人を確かめないまま島民を襲ったセイレーンにも重い責任があります。
フタバも途中から秘密を守る側へ移りました。ちいかわも真相を知りながら黙ったことで、限定的ながら悲劇の継続に関わっています。
ちなみに、報酬100倍と偽ってちいかわ達を呼び寄せた島民側にも、後ろめたさは残ります。
この順位付けは、あくまで私自身の見方です。同情できる事情があっても、行為そのものの重さは変わらない。そういう立場で考えました。
セイレーンの事故と報復をどこまで一続きに見るか、ちいかわの沈黙をどこまで責められるか。ここは、観た人によって答えが分かれるところだと思っています。
まとめ|全員が間違えた。でも罪の重さは同じではない
- 発端はセイレーンの衝突事故。ただし犯人を特定しない報復は別の選択
- 最も重いのはヒトハ。無関係な人魚を意図的に殺し、そのあとも隠し続けた
- ちいかわの沈黙は優しさだけではないが、苦しさを含んだ選択
これはあくまで私の見方です!あなたが観て感じたことも、ぜひ振り返ってみてください。
映画と原作の違いは、こちらの記事で場面ごとに比較しています。
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