この記事には、『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』と原作セイレーン編のネタバレがあります。
この記事で分かること
・ひみつ本の配布と中身
・原案が完成版と違う箇所
・話の通じるセイレーンが削られた理由
ひみつ本は入場者特典の第5弾。全52ページ


まず、ひみつ本そのものの話から。
これは『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』の入場者特典で、2026年9月19日から配布が始まりました。
全52ページの冊子で、鑑賞1人につき1冊。
非売品で、劇場ごとに数に限りがあります。
中身は、大きく3本立てです。
- セイレーン編を構想していたころのストーリーイラスト
- 描き下ろしマンガ「オデと島」
- 描き下ろしのエッセイマンガ「むちゃうま日記」
原案が描かれたのは2022年
ストーリーイラストが描かれたのは2022年。
いっぽう、原作でセイレーン編が始まるのは2023年3月です。
つまりこの原案は、連載が始まる約1年前の構想メモということです。
ひみつ本の原案が完成版と違う箇所
完成版と違っているところを、原案側の中身で並べました。
| 項目 | 原案(2022年)の中身 |
|---|---|
| セイレーンの姿 | 見た目が決まっておらず、代わりに「あのこ」が置かれている |
| 人魚の姿 | まだ決まっていない |
| ヒトハとフタバ | 犬とインパラの姿で、セリフもある |
| 島二郎 | 出てこない |
| 古本屋 | 出てこない |
| セイレーンと島民 | 島民とセイレーンがかなり会話をしている。(襲わない代わりに、ずっとご飯を作ってという条件が交わされる) |
| 決め手になる食べもの | レンコンのような食べもの。カレーもキャロライナリーパーも出てこない |
| しるこサンド | 出てこない |
| ちいかわの気づき | 電池を入れる場面は目撃せず、帰りの船で疑いはじめる |
| 銅像 | 島を救った勇者として、ちいかわたちの銅像が立つ |
| ヒトハとフタバの行き先 | 同じ船で、ちいかわたちの島へ |
セイレーンの仮置きと、ヒトハとフタバの顔。
この2つは、ナガノさんのインタビューでも触れられていた話です。
セイレーンの位置に「あのこ」が置かれているのは、見た目が決まっていなかったからです。
ナガノさんはインタビューで、描きながら固めていったと話しています。
ナガノさんの関わり方はナガノさんのインタビューで判明した映画との関わり方にまとめています。
更なる違い
表に入れきれなかった場面も並べておきます。
どれも原案で描かれているものです。
- ラッコさんはちいかわたちとは別に島へ来ている。目的は島限定の生クリームめちゃ盛りみかんパフェ
- ちいかわたちが人魚のコスチュームを着て、セイレーンを説得しにいく。コスチュームを着た理由は、敵意がないと伝えるため
- セイレーンに捕まると、高いところから吊るされて、カニにちょきちょきされる
- ラッコさんはセイレーンに捕まらず、ちいかわを助けに現れる
- ヒトハとフタバがセイレーンを怖がらず、フレンドリーに接している。(結果的に、フタバが事故に遭う)
いちばん変わったのはセイレーン。原案では話が通じた
ここからは私の考えです。
原案と映画本編を比べて、いちばん変わったキャラクター。
私はセイレーンだと思います。
原案のセイレーンがやっていることを、並べてみます。
- 島に現れ、島民から食料をまきあげる
- 具材がなくなったので、食べものが実る歌を歌う
- 襲わない代わりに、ご飯を作ってと島に住みつく
- 「人魚を食べると永遠の命を手に入れられる」という噂について聞かれ、「本当だけど、内緒にしてね」と答える。(そして、今の島に)
- 犯人を素直に差し出せば、ほかの島民には手を出さないと約束する
- 犯人がわかったあとは、捕らえていた島民をセイレーン自身がみんな逃がす
約束を守って、終わったら解放する。
単純な「恐ろしい怪物と島民」という関係ではなく、かなり具体的な共存関係が設定されていました。
完成版ではこの説明が大幅に削られたため、セイレーンと島民が互いを十分に理解できていない、不穏な関係性がより強くなったと見ることができます。
これがボツになった理由を、私はこう考えています。
仲間を食べられた側で、約束も守り、島民もちゃんと返している。
(フタバの事故はセイレーンが起こしたものですが、)被害者の側面が際立ちます。
そのため、それぞれに、やるせない事情があり、落ち度もある。
そういうバランスへ寄せたのだと思うんです。
ナガノさんは、誰か1人を悪者にする話にしたくなかった。
責任を取るべきはコイツだけだ、という決着を避けたのだと思います。
(もっと単純に、時間内に、描ける量の都合という見方もできますが。)
誰の責任がいちばん重いのかは映画ちいかわは誰が悪い?で考えました。
ちいかわの沈黙
もうひとつ、変更の意図がはっきり出ていると思うのが結末まわりです。
原案のちいかわは、帰りの船のうえで「犯人はあの2人ではないか」と思いかけます。
疑いの段階で止まっていて、確信までは行きません。
完成版は違います。
単三電池を目にして、その場で気づいてしまう。
そして、誰にも言わないまま島を出ます。
事件から真相を受けて一人で考えるちいかわが描かれます。
この差は小さく見えて、けっこう大きい。
知らないまま帰る話と、知ったうえで黙る話は、別の物語に見えます。
描き下ろしは「オデと島」と「むちゃうま日記」
ひみつ本には、新しく描かれたマンガも2本入っています。
1本は「オデと島」。
映画には出てこなかったオデが主役で、島二郎と顔を合わせます。
この組み合わせ、インタビューで名前が挙がっていたものです。
ナガノさんは、次があるなら島二郎を主人公にしたいと冗談っぽく話していました。
もう1本が「むちゃうま日記」。
タイトルのとおり、食べものをめぐるエッセイマンガです。こちらは、4話収録されています。
まとめ
ひみつ本からわかったことを、もう一度まとめます。
- ストーリーイラストは2022年のもので、連載が始まる約1年前の原案
- セイレーンと人魚は見た目が未確定で、セイレーンの位置には「あのこ」が置かれている
- ヒトハとフタバには顔とセリフがある
- ちいかわは真相に気づかず、帰りの船で疑いはじめるだけ
原案と完成版を並べると、何を残して何を消したのかが見えてきます。
それにしても、この原案から必要な要素を取捨選択し、さらに磨き上げて完成版へと仕上げたナガノさん、本当に凄すぎます!
ぜひまだ手に取れていない方も、この入場特典をゲットしてみてください!