森の奥に、ぽつんと1軒だけ建っている定食屋。
看板メニューはカツカレーと貝汁。店主は自分で海に潜って貝を採ってくる、なかなかのこだわり派です。
それなのに、あの店が繁盛している様子って、最後まで出てこないんですよね。
でも、味の問題ではないと思うんです。
先に結論を言っちゃいます。島二郎はそもそも、繁盛店を作ろうとしていなかった。
しかも今回、映画のタイアップで食べログに島二郎の店のページが公開されました。
⚠️ ネタバレ注意
この記事は『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』の場面に触れます。
私が観たのは公開初日の7月24日。ここから書くのは、作中の描写と公式タイアップの設定をもとにした私の考察です。(ネタ)
島二郎の店は、森の奥のカレー屋
島二郎は、ちいかわたちが訪れた島で定食屋をやっている人です。店の名前も、店主と同じ島二郎。
まずは、公式タイアップページに載っていた店舗情報を見てください。
| 項目 | 公式ページの設定 |
|---|---|
| ジャンル | カレーライス、郷土料理(貝汁) |
| アクセス | 人魚の島の森の奥。港から徒歩30分程度 |
| 営業時間 | 5:00〜20:00(早めにクローズあり) |
| 定休日 | 不定休 |
| 座席 | 2席(テーブル2席) |
| 予約 | 不可 |
| 予算 | 〜1,000円 |
| 評価 | 3.62 |
評価3.62。これ、実在の店ならかなりの高評価です。しかも1,000円以下!
味は評価されている。値段も安い。それでも店に客が並んでいる場面は、作中で一度も出てきません。
理由①|港から徒歩30分。森の奥という詰んだ立地
まず、どう考えても厳しいのが立地。
公式ページのアクセス欄、はっきり書いてあります。港から徒歩30分。
港でもなければ、観光客が歩く海岸沿いでもない。森の中を30分歩いた先です。
雰囲気は最高ですけどね。公式の紹介文でも「森の奥に佇む、知る人ぞ知る島の隠れ家」と書かれています。
ただ、商売として見ると話は別。知る人ぞ知る名店の「知る人」が、そもそもほとんどいません。
料理人の修行場としては完璧でも、飲食店の立地としては厳しすぎます!
理由②|15時間営業なのに、行くと閉まっている
ここが一番おかしいところ。
公式ページの営業時間、5時から20時です。
15時間営業。
短いどころか、そのへんのチェーン店より長い。しかも定休日は不定休なので、休みの日も決まっていません。
それなのに、ちいかわが訪ねたときには終わっていました。
「今日はもう終わったよ!!」
種明かしは、営業時間の横に小さく添えられた注記です。
「早めにクローズあり」。そして備考欄には「貝が無くなった場合、カレーのみの提供となります」。
材料がなくなった時点で、店じまい。おまけに予約は不可。
つまり、行ってみるまで開いているか分からないし、開いていても貝汁があるとは限らないんですよね。
森を30分歩いた先で「もう終わったよ」。これは心が折れます!
理由③|辛口一本勝負で、客を選んでいた
島二郎のカレーは、スパイスの効いた辛口です。
味は完成しているんでしょう。ただ、辛い料理って食べられる人を選ぶんですよね。
島には、ちいかわサイズの小さな人もたくさん暮らしています。しかもメニューはカツカレーと貝汁くらいで、甘口の選択肢は見当たりません。
ただ、店主が理想の味をそのまま出していて、客に合わせる気はなかった。そういう線はありそうです。
理由④|宣伝ゼロ
そして地味に効いてそうなのが、宣伝をまったくしていないこと。
港に案内板が立っているわけでもなく、島民に声をかけて回っている様子もありません。
看板に「貝汁・カツカレーの店」と書き足して、港から案内板を数枚置く。それだけでも、たどり着ける客はぐっと増えたのでは。
理由⑤|座席2席
公式ページを見ていて、一番びっくりしたのがここ。
座席、2席。
テーブル2席のみ。予約も不可です。
行列ができたところで、店に入れるのは2人だけ。
しかも島二郎は、漁師で、仕入れ担当で、調理も接客も一人。朝5時に店を開けるということは、貝を採っているのはそれより前ということになります。
この体制で客が急に増えたら、どうなるか。
- 貝の仕入れが追いつかない
- カレーの仕込み量に限界がある
- 接客に手が回らない
- 漁に出ている間は店を開けられない
- 島二郎が倒れたら即休業
2席の店に行列ができた時点で、もう回りません!
客が来なかったんじゃなくて、最初から2人ぶんしか想定していなかった。そう考えると、いろいろ辻褄が合ってきます。
島二郎は「いい人」
ここで、島二郎の名誉のために言っておきます。
営業は終わっていたのに、島二郎は倒れたちいかわにカツカレーと貝汁を出しました。代金を受け取る様子もありません。
困っている相手を放っておけない人なんですよね。
ただ、優しさと売上は、残念ながら比例しないということかもしれません!
そもそも繁盛を望んでいなかった
ここからが、この記事で一番書きたかったところ。5つの理由を並べてきましたが、まとめてひっくり返します。
島二郎は、店を流行らせようとして失敗したわけではないと思うんです。
そもそも、客の数を増やす気がなかった。
だって、朝5時前から海に潜って、20時まで店を開けて、それで席は2つですよ。
怠けているわけじゃないんです。むしろ働きすぎ。
ただ、その労力が全部、客を増やす以外のところに向いています。
- 食材は自分で海に潜って採る
- 鮮度と味にこだわる
- 森の奥から動かない
- 閉店後でも、困っている相手には料理を出す
経営者ではなく職人の判断ですよね!
集客を考えるなら、店は港のそばに出して、席を増やしたほうがいい。
それをしないってことは、大事なものが客数じゃないんでしょうね。
もちろん、単に商売が下手なだけという見方もできます。そこは作中で語られていないので、どちらとも言い切れません。
それでも私は、島二郎が自分で選んであのようにしていたほうに一票です。
大事なのは、何人来たかじゃない。目の前の2席に座った相手が、もう一度来てくれるかどうかです。
「島のうた」で、店の状況は変わった
そんな島二郎ですが、映画の終盤で状況が変わります。
ちいかわたちを見送る場面で流れるのが『島のうた(島二郎ver.)』。
歌うのは島二郎と島民たち。しかも歌詞の中身は、貝汁とカレーが中心。
笑ってしまう場面ですけど、よく考えるとけっこう大きな変化なんですよ。
森の奥で一人だった島二郎に、島民全員という宣伝部隊がついたわけですから!
5つの理由のうち、④の宣伝はこれで解消。島民が手を貸してくれるなら、⑤の一人運営も何とかなりそうです。
味はある。仲間もできた。宣伝も始まった。
あとは、席を増やして森の奥から移転するだけですね。
まとめ|繁盛しなかったのは、味の問題ではない
- 港から徒歩30分の森の奥。偶然たどり着くことすら難しい
- 15時間営業なのに、材料切れで早じまい。しかも予約不可
- 辛口一本で、客層を絞っていた可能性
- 宣伝がなく、店名だけでは何の店か分からない
- 座席2席。物理的に大勢を入れられない
島二郎の店が繁盛しなかったのは、味が悪かったからじゃありません。評価3.62がその証拠です。
客の数を増やすより、理想の味と目の前の客を大事にしていたから。私はそう考えています。
あの森の奥の定食屋、一度でいいから行ってみたいですね!