考察

ちいかわが大人に刺さるのは、「人生」そのものだから

ちいかわの世界に、住みたいと思ったことはありませんか。

草原が広がっていて、大きな食べ物が突然あらわれて、みんなでおいしいものを食べる。いいですよね。私も何度もそう思いました。

でも、実は大変です。普通に仕事があります。資格試験もある。お金だっている。

仕事で失敗するし、試験には落ちる。人間関係でも悩む。なんなら、討伐の仕事によっては命の危険すらあるのです。

ここで多くの人は「ちいかわ世界って、意外と現実に似てるよね」と言います。私も最初はそう思っていました。でも今回言いたいのは、その一歩先です。

似ているんじゃなくて、順番が逆なんじゃないか。私たちが暮らすこの現実の方が、「ちいかわ世界」そのものなんじゃないか。今日はそういう話をします。

普通に働かないといけない

ちいかわ世界の住民たちは、びっくりするほどよく働いています。

代表的なのが「草むしり」。ほかにも「討伐」のような仕事があって、働くことで報酬を得ています。

ここ、冷静に見ると結構シビアです。あんなに小さくてかわいいのに、何もしなくても毎日ハッピー、ではないんですよ。

ちゃんと働く。お金をもらう。そのお金で好きなものを買ったり、おいしいものを食べたりする。もう、完全に私たちです。

討伐の大変さは、私たちの「今日の仕事」の比じゃない

しかも、ちいかわ世界の仕事は楽なものばかりじゃありません。

草むしりならまだしも、討伐となると話は別です。相手によってはめちゃくちゃ強い。こっちを普通に襲ってくる。

つまり「今日の仕事、ちょっと大変だったな」のレベルが、私たちよりだいぶ高いんです。

私たちが月曜の朝に「会社行きたくないな」と思っているころ、ちいかわ達は「今日、無事に帰れるかな」くらいの緊張感を抱えている可能性があります。重さが違う!

その極みが、島を舞台にしたセイレーン編でした。報酬100倍という破格の討伐クエストに引き寄せられた結果、これまでと比べものにならない強敵が待っていたのです。

(関連記事:ちいかわ セイレーン編(島編)まとめ

憧れて選んだ仕事でも

しかも、働くのは割り当てられた仕事ばかりではありません。憧れて自分で選んだ仕事もあります。たとえば、シーサーです。

シーサーは、ラーメン屋「郎」でアルバイトをしています。憧れていた場所で働き、一生懸命に仕事を覚える。うまくできるようになろうと頑張る。ここも妙にリアルです。

好きな仕事なら毎日楽しい、とは、ならないんですよね。好きな場所で働いても、仕事は仕事。覚えることがある。失敗もする。店主との関係もあるし、お客さんも来る。忙しい日は忙しい。憧れの仕事にも、ちゃんと労働がついてきます。

でも、シーサーを見ていると、それが悪いことばかりじゃないとも思います。

大変でも、ここで働きたいと思える。できなかったことが、少しずつできるようになる。誰かに教えてもらう。自分なりに成長していく。

仕事の大変さは消えないけれど、何のために頑張るのかがあると、大変さの見え方は少し変わります。これは、ちいかわ世界でも私たちの世界でも同じなのだと思います。

(関連記事:シーサーの資格編(スーパーアルバイター)まとめ

資格を取れば変わる。でも試験は難しい

さらにリアルなのが「資格」です。

ちいかわ世界には資格試験があって、資格を持つことで仕事の幅や条件が変わります。これも私たちの世界そのものです。

今のままじゃダメかもしれない。資格を取ったら、もう少し選択肢が増えるかも。将来のために勉強しよう。そう考えて、仕事のあとに参考書を開く。ちいかわ達も、だいたい同じことをやっています。

努力と結果は、思っているほどつながっていない

ここでちいかわ達は、頑張ったからといって、すぐには受かりません。これがつらい。でも、ものすごくリアルです。

私たちはどこかで「努力すれば報われる」と信じたい。でもこの世界は、けっこう平然とその前提を裏切ってきます。

特に胸に残るのが、ちいかわとハチワレが一緒に試験を受けたときの描写です。一緒に頑張った。一緒に勉強した。でも、結果は同じにならない。ハチワレは受かって、自分は落ちる。

これ、大人になってもありますよね。同期が先に昇進した。友達が転職に成功した。同じ資格を受けた相手だけ合格した。

おめでとうと思う。本当にうれしい。でも同時に、自分も受かりたかったな、という気持ちもある。

人間の感情って、そんなにきれいに一色じゃないんですよね。誰かの成功を喜ぶ気持ちと、自分の悔しさは、普通に同居する。ちいかわは、その説明しにくい感情を、あの小さな体で全部やってくれます。だから大人が見て、ウッとなるのだと思います。

お金があると、ちょっとだけ世界が広がる

ちいかわ世界には、お金がある。働いて、報酬をもらって、それを使う。当たり前の仕組みですが、この「お金の描き方」もちいかわらしいと思います。

ちいかわ達は、大金持ちになるために生きているわけじゃありません。おいしいものを食べたい。欲しかったものを買いたい。友達と楽しいことをしたい。そのために、お金がいる。

つまりお金そのものがゴールというより、ちょっとうれしい時間と交換するためのものとして描かれているように見えます。

一番リアルなのは、人間関係

仕事。資格。お金。ここまで見ると、ちいかわ世界はかなり社会人っぽい。

でも、一番私たちの世界に近いのは、もしかすると人間関係かもしれません。

ちいかわ、ハチワレ、うさぎ。この3人、性格は全然違います。ちいかわは不安になりやすい。ハチワレは前向きで、言葉にするのが上手。うさぎは、うさぎです。

ずっと一緒にいる親友のような3人です。

問題は解決してないけど、とりあえず一緒にごはん

もちろん、何でも完璧に分かり合っているわけじゃありません。友達だからといって、相手の悩みを全部解決できるわけでもない。

試験に落ちた友達の代わりに、合格することはできません。怖いことを、全部なくすこともできない。

それでも、一緒にごはんを食べる。隣にいる。待っている。助けに行く。うれしいことがあれば、一緒に喜ぶ。この距離感が、ものすごくリアルです。

人間関係って、あなたの問題を全部解決します、ではないんですよね。むしろ、問題は解決してないけど、とりあえず一緒にごはん食べよう、くらいのことだったりする。でも人生では、その「とりあえず一緒に」が、意外と大きい。

この世界で一番こわいのは

友達がいれば、大抵のことは越えていける。そう思いたいところですが、この世界には、友達がいても消えないこわさがあります。

討伐対象は強い。セイレーンもこわい。でも、ちいかわ世界で本当にこわいのは、たぶんそこじゃないんです。

一番こわいのは、ルールだけがきっちり存在するのに、なぜそのルールなのかを、誰も説明してくれないことです。

検定はある。討伐の報酬も決まっている。討伐を管理しているらしい存在(鎧さん)もいる。でも「どうしてこの世界はこうなっているのか」を教えてくれる人は、どこにもいません。

これ、私たちの現実とまったく同じなんですよ。

なぜ頑張っても報われない日があるのか、なぜ理不尽なことが起きるのか、誰もはっきり説明してくれない。

理不尽に、理由すらないこと。それが、どんな怪異よりリアルでこわいのだと思います。

それでも、ちいかわ世界が優しい理由

こうして見ると、ちいかわ世界は結構ハードです。

働かないといけない。試験には落ちる。欲しいものを買うにはお金がいる。仕事を覚えるのも大変。危険なものは突然あらわれる。頑張ったからといって、毎回きれいに報われるわけでもない。

かわいい見た目で包まれているから忘れそうになりますが、ちいかわ達はすごい存在です。

ちいかわが大人に刺さるわけ

子どもの頃は、大人になればいろいろ分かるようになる、と思っていました。

でも実際になってみると、分からないことは普通にある。仕事で失敗する。将来が不安になる。資格を取ろうか悩む。お金も気になる。人間関係も難しい。なんとかなるかな、と思いながら、なんとかしている。そんな毎日です。

だから私たちは、ちいかわを見て笑いながら、ときどき妙にウッとなるのだと思います。

ちいかわ達は、小さくてかわいい。でも、やっていることは私たちとあまり変わりません。働いて、失敗して、落ち込んで、おいしいものを食べて、友達と笑って、また次の日を迎える。

だから最初の話に戻ります。ちいかわ世界が現実に似ているんじゃない。私たちの現実の方が、ずっと前からちいかわ世界だったんです。生きていくって普通に大変だよね、という事実を、かわいい皮でくるんだ世界。それが、私たちの毎日そのものなんだと思います。

でも、その世界には同時に、プリンがあります。ラーメンだってある。友達もいる。だから、なんとかなる。いや、なんとかならない日もあるけれど、とりあえず今日は、おいしいものを食べよう。ちいかわを見ていると、そんな気持ちになります。

大変なことがなくならなくても、楽しいことまでなくなるわけじゃない。ちいかわ世界と私たちの世界の一番大きな共通点は、たぶんそこです。

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